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初めて出会うのに、懐かしい。異国文化が交わり合って織りなされる「オリジナリティ」と「温もり」を発信するカフェ「oriental dish Wadibar」

異国情緒たっぷりの店の外観。
オーナーのこだわりが詰まった空間。家具や装飾にも注目だ。
一人でカフェを切り盛りする、オーナーの濵田勅子氏。右上のアラビア語のメッセージは、店のコンセプトを表現している。
一番人気のフルーツチャイ(800円)。フルーツのボリュームと美しい色層に注目だ。
ヨギティー(ホット550円、コールド600円)は、その日の体調や気分に合わせて種類を選べるのが嬉しい。
新メニューのチベットバター茶(600円)。優しい甘さと塩味のアクセントに、ハマる人が続出。
その日の朝に店内で焼かれるベーグル「粉模様の空」(350円)。店を訪れる度、違う味に出会える。

観音寺駅から、駅通り商店街を抜けたところにぶつかる柳町通り。数年前から再開発が進み、真新しい建物や道路が、現代的な景観を醸成している観音寺市の中心街である。しかし、一本路地に入れば、昔から地元民に愛されてきた飲食店や商店が立ち並び、懐かしい町並みが変わらずに残されている。その路地の一角に、ひと際異彩を放っているにも関わらず、その町並みに静かに溶け込むように存在している「空間」がある。それが、今回紹介するカフェ「oriental dish Wadibar(ワディバル)」を構える「gaouv rabari」 (ガーンヴ ラバーリー)である。

「gaouv rabari」(ガーンヴ ラバーリー)は、青木學氏と濵田勅子氏の両氏がオーナーを務める、いわば、カフェと商店の複合施設である。店舗で扱う商品は、青木氏が現地で買い付けを行う、アジアを中心とした地域の古民具や雑貨に始まり、アクセサリー、衣類、アロマ・ケア用品、濵田氏自ら手掛けるドライフラワーや自然植物を使ったアレンジメントやオブジェなど、多岐にわたる。

店名にもなっている「gaouv」は、ヒンディー語で「村」という意味を持つ。「いくつものお店が軒を連ねる、小さな村のようなお店でありたい」というオーナーの願いや、「遠くて懐かしい村」という店のコンセプトからも分かるように、確かにそこは、ただの商業施設ではなく、異国の文化が交じり合って独自の文化が生み出される国境の「村」のようである。ちなみに、「rabari」は、 インドとパキスタンの国境付近に今も存在し、動物とともに生きて生計を立て、素晴らしい刺繍技術や織りの技術をもつラバーリー族にちなんで名付けられた。元々この場所にあった土地と建物の可能性をオーナー2人で話し合い、リノベーションすることにより現在の空間が完成した。(リノベーション作業は、時折仲間の力を借りながら、ほとんど2人で行ったという。)

オリエンタルな雰囲気たっぷりの店内へ一歩足を踏み入れると、遥か遠く異国の地へ迷い込んだかのような錯覚を覚える。しかし、どこか懐かしい気持ちも芽生えるのは、昔ながらの日本家屋が再利用されていることも手伝っているのかもしれない。

この店に通う客のほとんどが目当てに訪れるのが、カフェ「oriental dish Wadibar(ワディバル)」だ。「Wadibar」というカフェの名前は、Wadi(アラビア語で渓谷、谷間)と、Bar(食事をしたりお茶をしたりするバールまたはバル)を組み合わせた造語である。元々は、2010年にgaouv rabariがオープンするより前の2002年に、隣の三豊市に実在していた店で、その看板を、店の意志と共に、現オーナーの濵田勅子氏が引き継いだものである。

「人生、山あれば谷あり。ふと辿り着いた谷間の店で、ひと時ゆっくり過ごしてもらいたい。そんな思いで、お店を開いています。」と話すのは濵田氏。外国語大学在学中に多文化に出会い、アジア少数民族や中近東の文化の研究に没頭するようになった。帰郷後、実家の生花店で働きながらも、オリエンタルな地域への好奇心は失せることなく、当時三豊市のhorridula(ホリドゥーラ)というお店に通っていたことがきっかけになり、そこで意気投合したhorridulaオーナー青木氏と共に、2010年、gaouv rabariをオープンさせた。

店内には、2つのアラビア文字のメッセージが書かれている。1つは『食べたり飲んだりすることは、人生を豊かにする』、もう1つは、キャラバン隊を出迎える現地の村人が掛ける言葉で、『見ず知らずのお方ですが、今この時ばかりは自分の家のようにくつろいでいってください』というものだ。古今東西、そのどれをも網羅するほど種類豊富なドリンクメニューや、オーナーが聞かせてくれる、メニュー1つ1つの背景にある現地の人々の暮らしや文化の話。そして、テーブルや照明だけでなく、その他の家具やオブジェから装花、食器1つにまでオーナーがこだわってプロデュースしている空間そのものが、そのメッセージを見事に具現化している。

店内では、東南アジア・南アジア・中央アジア・中近東・アフリカ各地のドリンクやお菓子が振る舞われている。研究を重ね、それぞれの本来の特徴や良さを知り尽くした上で、独自のセンスが光るアレンジを加えた「Wadibar流」で提供されるドリンクは、数十種類にのぼり、どれも見逃せない。そのの中でも一番人気を誇るのが、フルーツチャイだ。トルコで飲まれるエルマチャイ(エルマ;りんご、チャイ;お茶=アップルティー)をベースに、季節のフレッシュフルーツ(7種ほど、果物の内容は日によって変わる)を注文を受けてからカットしてグラスに入れて作られる。前身であるhorridulaから受け継がれたWadibarの創作ドリンクで、フルーツの美しい色層とボリュームが人気の秘密。

そして、Wadibarの定番と言えるのが、Yogi tea(ヨギティー)。知る人ぞ知る、インドの伝承医学アーユルヴェーダを元にハーブやスパイスを独自配合したヒーリングティーだ。20種類以上の中から、その日の気分や体調に合わせて自分で選ぶこともできるし、オーナーにお薦めを尋ねてみるのも良いだろう。また、新メニューも続々と登場しており、中でもおすすめは、チベットバター茶だ。チベットやブータンで日常的に飲まれているバター茶。店内で無塩バターから手作りしている「ギー」と呼ばれる油が使われる。どこか懐かしいバター飴のような味わいで、岩塩のアクセントが甘さを引き立てている。

Wadibarのコンセプトに寄り添うように作られたオリジナルのフードも見逃せない。ベーグル「粉模様の空」は、北海道産強力粉、うどん粉、てんさい糖、天日塩、白神こだま酵母を基本生地に、動物性たんぱく質・保存料を使用せずに作られている。「エキゾチック(クミン・ターメリック・カシューナッツ・蜂蜜)」「チョコアーモンド」「きなこ黒豆」など、日替わりでユニークなベーグルが数種類並ぶ。普段はドリンクとお菓子のみの提供だが、イベント時などには、異国創作メニューの食事も提供も行っている。

「旅に出たくなったり、ふと非日常感に浸りたくなったときに思い出してもらえるカフェでありたい。また、毎日でも通いたいと思ってもらえるカフェでもありたい。」そう語る濵田氏の営むWadibarは、初めて訪れる者には、旅先でもてなしを受けたときのような安らぎと不思議な懐かしさを、常連客には訪れる度に新しい出会いと気付きを提供してくれる、唯一無二の存在のカフェと言えるだろう。

(取材=合田 麻菜香(ごうだ まなか))

店舗データ

店名 oriental dish Wadibar(ワディバル)
住所 香川県観音寺市観音寺町甲3082-7
アクセス JR観音寺駅から徒歩10分
大野原IC、豊中ICから車で約15分
営業時間 【火~金】13:00~20:00 【土・日】11:00~20:00
定休日 月曜休
客単価 550円~
オープン日 2010年9月23日
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